このシリーズでは、ドキュメントサイトをつくりながら Docusaurus の使い方を説明しています。

前回「基本設定編」では、docusaurus.config.js の設定とスタイルの調整まで進めました。今回はドキュメントページの追加とサイドバーのカスタマイズを見ていきます。

本記事の完成後のデータ一式は以下の GitHub リポジトリにアップしています。

現在、サイトのルート(/)にアクセスすると、以下のように src/pages/index.js(React ページ)の内容が表示されます。

ホームのスクリーンショット

このシリーズでつくるサイトは、内部向けの CMS 操作ガイドラインなので、このページは表示せずにドキュメントページをルートに設定します。

この作業は以下の 3 ステップで進めます。

  1. docusaurus.config.js の設定変更
  2. docs/index.md の追加
  3. src/pages/index.js の無効化

1. docusaurus.config.js の設定変更

見出し「1. 」

まず、設定ファイル docusaurus.config.jspresets 以下の、docsrouteBasePath: '/' を指定します。また、リンク切れを防ぐために、フッタのリンク先もあわせて変更します。

以下に該当するコードを抜粋します。

docusaurus.config.js
const config = {
  presets: [
    [
      'classic',
      /** @type {import('@docusaurus/preset-classic').Options} */
      ({
        docs: {
          /* `docs` をホームに変更 */
          routeBasePath: '/',
          sidebarPath: require.resolve('./sidebars.js'),
        },
      }),
    ],
  ],

  themeConfig:
    /** @type {import('@docusaurus/preset-classic').ThemeConfig} */
    ({
      footer: {
        links: [
          {
            title: 'CMS 操作ガイド',
            items: [
              /* フッタのリンク先を変更 */
              {
                label: 'Guides',
                to: '/',
              },
              {
                label: 'Blog',
                to: '/blog',
              },
            ],
          },
        ],
      },
    }),
};

2. docs/index.md の追加

見出し「2. 」

次に、ドキュメントのインデックスページを用意しますが、ひとまず、docs/intro.mddocs/index.md にリネームします。

Docusaurus では、インデックスページと認識される優先順位は以下のとおりです。

  1. ファイル名が index(例: docs/guides/index.md
  2. ファイル名が README(例: docs/guides/README.md
  3. 直上のディレクトリ名と同じファイル名(例: docs/guides/guides.md

拡張子は .mdx でも同様です。また、ファイル名の大文字・小文字は区別しません(case-insensitive)。

3. src/pages/index.js の無効化

見出し「3. 」

Docusaurus では、ドキュメントやブログ以外のページは src/pages 以下に格納します。この src/pages には、React ページに加え、Markdown / MDX ファイルを置くことができます。

現在、セットアップ時に生成された src/pages/index.js が存在しており、このページがホームだと認識されているので、src/pages 以下のファイルをすべて削除しましょう。

この状態でルートにアクセスすると、ドキュメントのインデックスページが表示されます。

ホームのスクリーンショット

これで、ドキュメントページをホームに設定する作業は完了です。

トラブルシューティング

見出し「トラブルシューティング」

Docusaurus を起動させたままディレクトリやファイル名を変更すると、以下のようなエラーメッセージが表示されることがあります。

Docusaurus のエラーメッセージのスクリーンショット

このようなときには、一度 Docusaurus を終了して、再度立ち上げ直すと復旧することがあります。

また、ブラウザのキャッシュが残っていることがあるので、ローカル環境で変更が反映されないときには、ブラウザを更新してみてください。

それでも解消しない場合には、問題箇所を特定して修正する必要があります。

ドキュメントページの追加

見出し「ドキュメントページの追加」

それでは、ドキュメントページを追加していきますが、今回追加するドキュメントページおよび、格納する画像ファイルの構成は以下とします。

docs 以下のファイル構成
docs
├── index.md
├── pages
│   ├── home.md
│   └── services.md
├── information.md
└── assets
ファイルパス内容
docs/index.mdドキュメントのインデックスページ
docs/pages/home.md「ホーム」の編集方法を説明するページ
docs/pages/services.md「サービス」の編集方法を説明するページ
docs/information.md「お知らせ」の編集方法を説明するページ
docs/assets画像ファイル

まず、セットアップ時に生成された、docs/tutorial-basicsdocs/tutorial-extas の 2 つのディレクトリを削除しておきます。

そのうえで、GitHub リポジトリの docs 以下のファイルを反映します。

docs/index.md の中身を見ると、以下のような Markdown のコードで構成されています。

docs/index.md
# はじめに

このドキュメントは「Pace Layering」のコーポレートサイトに導入されている、コンテンツ管理システム(以下「CMS」)の使用方法を掲載しています。

## CMS

CMS は Git ベースでオープンソースの「TinaCMS」を使用しています。

- [TinaCMS](https://tina.io/)

## インストール

以下の Git リポジトリよりデータ一式を取得します。

- [Git リポジトリ](#)

:::caution

リンク先の Git リポジトリは存在しません。

:::

データを取得したディレクトリに移動して、npm パッケージをインストールします。

```bash
npm install
```

## TinaCMS の起動

以下のコマンドで TinaCMS が起動します。

```bash
npm start
```

起動したあと、各画面には以下の URL でアクセスできます。

| 画面 | URL |
| --- | --- |
| ウェブサイトのホーム | [http://localhost:3000](http://localhost:3000/) |
| TinaCMS 管理画面 | [http://localhost:3000/admin/index.html](http://localhost:3000/admin/index.html) |

このファイルを反映すると以下のような見え方になります。

インデックスページのスクリーンショット

Markdown 記法の詳細については、次回「Markdown / MDX」編で説明します。

本記事の Markdown ファイルでは使用していませんが、ファイルの先頭に YAML 形式でページのメタデータを指定できます。

以下は、ドキュメントに description と、タグを指定する例です。

Front Matter の例
---
description: CMS の使用方法を掲載しています。
tags:
  - CMS
  - npm
---

# はじめに
<!-- ... -->

この --- で区切られたエリアは Front Matter(フロントマター)と呼ばれます。

Docusaurus では、以下のような内容を指定できますが、Front Matter を指定しない場合にはデフォルト値が使用されます。

キー内容デフォルト
idドキュメント IDファイルパス
titleタイトルh1 もしくは id
description概要Markdown の最初の行
imageSNS シェア画像undefined
slugカスタム URLファイルパス
tagsタグ(配列で指定)undefined
draft下書きfalse
sidebar_positionサイドバーの位置デフォルトの並び順

すべてのフィールドの詳細な説明は、公式ドキュメントをご確認ください。

サイドバーのカスタマイズ

見出し「サイドバーのカスタマイズ」

一般的なウェブサイトであれば、サイドバーの役割は補助的なナビゲーションにとどまりますが、ドキュメントサイトにおいては、全体の構成を確認したり、現在地を知るためにも重要なツールです。

Docusaurus でサイドバーを管理する選択肢としては、以下のパターンが考えられます。

  • A. sidebars.js で一元管理
  • B. 自動生成 + 個別調整
  • C. ファイル名の接頭辞

A. sidebars.js で一元管理

見出し「A. 」

sidebars.js で、サイドバーの情報を一元管理する方法です。

本シリーズではこのパターンを採用していきますので、const sidebars = { } を以下のように変更してください。

sidebars.js
const sidebars = {
  tutorialSidebar: [
    {
      type: 'doc',
      id: 'index',
    },
    {
      type: 'category',
      label: '固定ページ',
      link: {
        type: 'generated-index',
        title: '固定ページ',
        slug: '/pages',
      },
      items: [
        'pages/home',
        'pages/services',
      ]
    },
    {
      type: 'doc',
      id: 'information',
    },
  ],
};

module.exports = sidebars;

type: 'doc' は、ドキュメントページへのリンクを意味し、id(ドキュメント ID)は「ディレクトリ + ファイル名(拡張子を除外)」で対象となるページを指定します。

以下にドキュメント ID の例を示します。

ファイルパスドキュメント ID
docs/index.mdindex
docs/pages/home.mdpages/home
docs/pages/contact/form.mdxpages/contact/form

type: 'category' は、カテゴリの階層を意味し、type: 'generated-index' でカテゴリインデックスのページを生成しています。このとき、スラッグ(slug)を指定することができます。

items の配列には、このカテゴリに属するドキュメント ID を指定しています。

上記のコードを反映すると、サイドバーの設定とカテゴリインデックスのページが反映されます。

「固定ページ」のカテゴリインデックスのスクリーンショット

この方法では、ページが追加・削除されるたびに sidebars.js の編集が必要になるので、多少のメンテナンスコストはかかりますが、1 つのファイルでデータが管理できるので、サイドバーの並び順を細かく制御したい場合には堅実な手法です。

なお、sidebars.js では、部分的に自動生成(type: 'autogenerated')を設定することもできます。例えば以下のように、docs/pages 以下を自動生成にすることも可能です。

sidebars.js
const sidebars = {
  tutorialSidebar: [
    {
      type: 'doc',
      id: 'index',
    },
    {
      type: 'category',
      label: '固定ページ',
      link: {
        type: 'generated-index',
        title: '固定ページ',
        slug: '/pages',
      },
      items: [
        {
          /* 自動生成の指定 */
          type: 'autogenerated',
          dirName: 'pages',
        }
      ]
    },
    {
      type: 'doc',
      id: 'information',
    },
  ],
};

module.exports = sidebars;

B. 自動生成 + 個別調整

見出し「B. 自動生成 + 個別調整」

こちらはベースは自動生成にまかせ、順番を変えたい場合には、Front Matter やカテゴリの設定ファイルである _category_.json もしくは _category_.yml で調整する方法です。

初回セットアップの状態では、こちらのパターンが採用されています。

sidebars.js
const sidebars = {
  tutorialSidebar: [
    {
      type: 'autogenerated',
      dirName: '.'
    }
  ],
};

module.exports = sidebars;

自動生成ではカテゴリのインデックスページは生成されないため、_category_.json または _category_.yml で指定します。

以下は「固定ページ」のカテゴリインデックスを生成する例です(YAML 形式)。

docs/pages/_category_.yml
position: 2
label: 固定ページ
link:
  type: generated-index
  title: 固定ページ

position はサイドバーの順番を数値で指定します。2.5 のように少数点以下も指定できます。

また、linktype: generated-index によって、ディレクトリ直下に含まれるページのリンク一覧を生成しています。

このままだと、position を明示している「固定ページ」がサイドバーの一番上に表示されるので、各 Markdown ファイルの Front Matter の sidebar_position にも順番を指定します。

docs/index.md
---
sidebar_position: 1
---
docs/information.md
---
sidebar_position: 3
---

これで、カテゴリインデックスも含めて、サイドバーの設定ができました。

「固定ページ」のカテゴリインデックスのスクリーンショット

サイドバーの並び順を細かく制御したい場合、個別にファイルを調整していかなければならないので、この方法は推奨できません。

また、_category_.ymllabel で指定した値が URL となるため、日本語のラベルの場合に、パーセントエンコーディング(percent-encoding)がおこなわれ、シンプルな URL にならない点も留意しておく必要があります1

C. ファイル名の接頭辞

見出し「C. ファイル名の接頭辞」

最後に、ファイル名の頭に数字の接頭辞を付けて管理する方法です。

sidebars.js では、type: 'autogenerated' を指定してすべて自動生成にしたうえで、以下のように、ファイル名の先頭に 01- のような接頭辞をつけて並び順を指定します。

この接頭辞は URL やドキュメント ID などのデフォルト値からは自動的に除去されます。

docs 以下のファイル構成
docs
├── 01-index.md
├── 02-pages
│   ├── 01-home.md
│   ├── 02-services.md
│   └── _category_.yml
├── 03-information.md
└── assets

この方法では、ファイルシステムの並び順とサイドバーの並び順がそろうので、一見すると理想的なパターンのように思えます。

しかし、ファイルが追加されて並び順が変わると、前後のファイル名にも影響を及ぼすことになります。さらに、Markdown 内でそれらのファイルにリンクが貼られている場合には、リンク指定も更新する必要が出てきます。

また、「B. 自動生成 + 個別調整」同様に、_category_.yml でスラッグ(URL)を指定できないため、パーセントエンコーディング(percent-encoding)が発生する懸念も残ります。


このように、Docusaurus でのサイドバーの管理方法はさまざまですが、それぞれのパターンによって一長一短があるので、ドキュメントサイトの運営方針に応じて、どのパターンを採用するかを検討するとよいでしょう。

サイドバーのより詳しい説明については、公式ドキュメントをご確認ください。

次回は、Markdown / MDX の機能を見ていきます。

脚注

  1. パーセントエンコーディングとは、URL に使えない文字を変換する処理で、例えば「固定ページ」という文字列であれば %E5%9B%BA%E5%AE%9A%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8 に符号化されます。